Part 4:犬嫌い?
 クリスは小さい頃から他のワン達と遊んでいても、唸ったり吠えたりする事は全くなかった。ワン以上に人間が大好きで、小さいときにかわいがってくれた人に対しては今でも最高の歓迎を示す。
 ところがある時、子犬を連れた母犬の側を通ってマズルに歯をあてられ、黒い毛がハゲてしまった(以後そこからは白い毛しか生えてこないがなぜだろう......)。以来その親子が近づくと口の端をピクピクさせて不細工な顔をする。
 7ヶ月になった時、彼女の犬嫌いは決定的になった。シーズン中ということもあって、公園内のいつもの遊び場を遠巻きに自転車で通り過ぎようとした時、突然ノーリードの黒ラブさんたちが飛び出してきてクリスの周りを取り囲んだのだ。その子達の中にはいつもボールで遊ぶ友達も入っていたが、なぜかその日に限ってオスの黒ラブばかりがそこにいた。しかもアスリート系じゃないタイプである。私は「まずい」と思って速度をあげたが、時既に遅し。クリスはみんなに囲まれてクンクンされ、逃げ場を失って固まってしまった。私は彼女のリードを引っ張って、彼女をその固まりの中から引きずり出して逃げ帰って来たが、それ以来彼女は犬達の集まる場所に行くと落ち着かなくなり、帰りたがるようになった。特に黒ラブの側には絶対寄ろうとしない。それどころか、今まで楽しく遊んでいたその場所さえ避けるようになったのだ。
 昔はよく、外飼いにしている犬が、近所にシーズンの子がいると、自分の家の垣根を越えてでも逃走してその子の家に行くという話を聞いたものだが、「まさかそんな」と思うのはもう止めた。
 とにかく、クリスの犬ぎらいは私のせいだと反省している。もう少し気をつけてやれば良かった。

 子供達と言えば、小さいときから兄と妹思いっきり遊んでいたので犬見知りなどないと思っていたのだが、ハンスが公園に行き始めた頃に骨折のため自宅療養を余儀なくされたニッキーはハンスとしか上手に遊べない子になっていた。
 その反面ハンスは幼い頃から物怖じすることなく誰とでも「遊ぼう」とさそい、それでも先輩のボーダーにガツンと言われると一目置くといったようにかなり社会性は兼ね備えていたはずだったが、ある時突然好き嫌いをあらわにし始めた。好き嫌いというより、態度が悪くなったといった方がいいだろう。自分よりサイズの大きい子に対しては相手がオスでも低姿勢。「兄ちゃん、僕と遊んで。」と口舐め攻撃をする。そうかと思うと自分と同じくらいか小さい子に対して、「俺をなめんじゃないぞ」とばかりにガウガウ文句を言って脅しをかける(私にすれば、負け犬の遠吠えか、引かれ者の小唄といったところだが....)。いつも一緒に仲良く遊んでいた女の子とでさえ、仲良く遊んでいたかと思うと喧嘩しそうになったり、目の離せないことこの上なしである。
 こういった行動は1歳前後から始まり、今迄3頭引いて自転車散歩をしていたのが困難になってきた。だんだん自我が芽生え、母や妹と一緒にいると「俺の女に手を出すな」状態になってしまうのだ。更に彼の行動に拍車をかけたのが臆病ニッキーの動きである。彼女は散歩の途中、通りでよその犬とすれ違うたびにそわそわするので、ハンスは益々増長していった。

 2歳を過ぎたころから子供たちが少しは成長したのか、それともやっと今の家やそのまわりの環境に慣れてきたのか前ほどぐちゃぐちゃではなくなってきたのではないかと思っている(私だけかも知れないlが)。
今までは新入りのくせに、すれ違う度に興奮し、吠えないまでも足取りが変わったり、いつでもスタンバイという状況だったのが、すれ違いながらガウガウ言われても、早めに「アトヘ」のコマンドをかけておくと、ちらちら見ながらも、とりあえずちゃんとついてくる。特にハンスは今迄見境無く文句を言っていたのが、オス犬に限るようになってきた(生後9ヶ月で去勢しているのだが、女の子に目覚めてきたのだろうか.....)。
ただ、子供たちの片方が気にしていなくても、もう1頭が少しでも興味や関心を示したりすると一緒になって行動するので、結局常に気を抜く訳にはいかないということだろうか。

とにもかくにも、コマンド無しでも私だけに集中してくれていれば問題はないのだが....。多頭飼い(同じ月齢)の難しさか、まだまだ先は遠い。

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