Part 3:トイレトレーニング
 クリスは我が家に来た時からブリーダーさんのおかげで、トイレシーツで用を足すことは覚えていた。ただ、幼いために回数が多く、夜中寝室でトイレをしなくなるようになるまでには随分時間がかかった。

 クリスは5〜6ヶ月の頃、管理人の留守中、何度かトイレシーツを切りきざんで居間に散らかすという悪行におよんだため、留守をする時は必ずシーツをソファの下に隠しておくようにした。ところが、ある日家に帰って見ると、隠しておいたはずのシーツが居間の真ん中に引き出され、しかもくちゃくちゃになっていた。それを見て『あ〜あ、またやられたか。』と思い、泣く泣くシーツを片づけようとしたら、何とくちゃくちゃになったシーツの中からウ○チが出て来た。管理人のいない間トイレの我慢が出来なくなった彼女はソファの下からシーツを引きずり出したに違いない。さすがに頭がいいと言われる犬種だけあると管理人はひどく感心した。

 子供達がトイレとシーツの関係を覚えるのにさほど時間はかからなかった。最初(よちよち歩きの頃)は大きなサークルの中にシーツを敷き詰めた。特にトイレの場所と指定したわけではなく、行動範囲が狭い頃は、その中でご飯も食べ、トイレも済ませ、昼寝もした。もちろん、トイレをした後はすぐ片付け、なるべく匂いをつけないようにした。
 子供達がトイレをするたびに、「ウ○チ」「おし○こ」と連呼して、コマンドと行動を関連づけた。

 行動範囲が広がってくると、子供達はサークルの中で食事をしてトイレを済ませると、みんなで走り回ったり、思い思いの場所に移動した。トイレシーツの感触は覚えているので、トイレに行きたくなるとサークルに戻ってきて用を足した。ただ、5頭もいると、誰かがトイレに駆け込むとみんなつられてしまい、トイレに入りきれなかったり、ギリギリまで遊びに興じてトイレまでたどり着けなかったりしたことがあったので、居間のトイレはサークルの他に2箇所作り、成長するに従って一つずつ減らしていった。新しいオーナーさんに引き取られる生後2ヶ月ぐらいまでにはトイレは一つになっており、殆ど粗相をしなくなっていた。

 子供達は外に出られるようになると、まずハンスがコマンドで庭でもトイレを済ますようになった。が、ニッキーは一向に外でしようとはしなかった。散歩に行っても気配すら見せず、家に帰って来るなり、室内トイレに飛び込むといった生活がずっと続いていた。
とにかくシーツがないと全くしないので、初めての遠出の時、高速のサービスエリアで地面にシーツを敷いてトイレのコマンドを連呼した。知らない人が沢山いる中でコマンドを連呼するのは少々恥ずかしかったが、根気よく声をかけ続けていたら、やっとトイレを済ませた。それからは、シーツさえあれば外でもトイレが出来るようになったのだ。まずは一安心。
 その後ニッキーは長時間の外出中、とうとう我慢が出来なくなり、なんの前触れも無く、突然外でトイレをした。外ですることに慣れてきていたのだろう。人一倍臆病なニッキー。なかなか簡単には行かなかったね。

 コマンドと行為が関連づけられたことで、以後、して欲しい時にはいつでもどこでもしてくれるようになり、普段の生活がとても楽になった。
たとえば、流行のカフェやショッピングモールなどに連れて入るときも、コマンドをかければ先に済ませてくれるので、室内で失敗をすることが無い。出来る限り彼らと一緒に行動したい管理人にとっては、その心配が無いだけでも非常に楽である。

 やっとニッキーも自宅の庭でトイレが出来るようになってきたとき、やむを得ず庭のない家に移ることになってしまい、せっかく成功しかかったトイレトレーニングも再びバスルームを利用したシーツの上でしなくてはならなくなった。
 一日2回のトイレで我慢できるようになったハンスと違い、お嬢様は昼間何度かトイレをもよおし、その度に居間の扉を前足でひっかいてトイレを教えた。その為引っ越した後に敷金からドアの修繕費をしっかり取られてしまった。

 半年住んだその家を出る頃にはニッキーのトイレもみんなと同じ一日2回、しかも散歩に出る時は、みんなと一緒にコマンドで大小済ませることが出来るようになっていた。めでたし、めでたし。

 その後やっと安住(?)の狭い家に落ち着いたクリ家の3頭は無事その家の周辺にも慣れ、朝夕2回天気のよい日は外でトイレを済ませてから、散歩に出るようになった。
 しかし、雨が降るとクリ家は管理人のわがままで散歩はお休みにしているので、バスルームにシーツを敷いてトイレ代わりに使っている。
もちろんせまいバスルームに3頭一度は入れないので、洗面所の戸口から1頭ずつ入ってきて用を済ませて出て行く。
その順番もいつの間にか自分たちで決めたらしく、ニッキー、ハンス、クリスの順で、名前を呼ばなくても順番に入ってくる。
雨の日は特にそのニオイで分かるのか、寝室から階下に降りていくと、散歩に行くときは玄関口で待っているのに、雨の日は洗面所に直行し、バスルームの入り口で並んで待っている。
まるで、人間がトイレの順番待ちをしているかのようなその光景にいつも笑わされてしまう。

 2004/10編集


「あんなこと、こんなこと」目次
Topページに戻る